下妻市立高道祖小学校
下妻市高道祖 2638-1
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大宝沼のつばめ

大宝出身のロシア文学者中山省三郎の詩集「水宿」におばあさんの話のかたちでのっているのをそのままのせました。

松の葉をかまどにくべると,松の葉はかすかな音を立てながらよく燃える。枯れた松の葉の中には,松かさや緑の葉もまじっている。湯のたぎる音をきいていると,山の村の幼いころが思い出される。かまどやいろり,火ばちやお風呂,火を燃やすと,おばあさんの顔は火の光に明るくなる。そこへ僕は近づいていって,昔のお話を聞く。

「むかしむかし,日光のりゅうがぬまの水をぬすみにきた。まっくろな雲に乗ってきた。雨がふるいなびかりが鳴る。これを沼のへりのやしろの下で見ていたのは,八幡太郎義家はちまんたろうよしいえであった。八幡太郎は龍をめがけて矢を放った。たしかに手ごたえがあって,沼はしずかになり,龍は退治された。その時,矢の前をとんでじゃまをしたのはつばめであった。つばめの尾が二つになっているのは,矢に当たったからだよ。どの家でもつばめに巣をかけさせないのは,そんなことがあったからだよ。」

そのころ沼には水がいっぱいあって,日光の山々のかげがうつっていた。村はおばあさんのいわれたように,つばめに巣をかせさせない家ばかりであった。松の葉は今も,ふるさとから遠いところで燃えている。ふるさとの沼は埋まり,つばめは来て巣をかけ,昔話を知っている子供らも少なくなったが,またいつか田舎の田舎で,火にあたりながら昔話をする時もきっとこよう。

これは下妻市大宝地区に伝わる話です。